大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 平成6年(オ)2037号 判決 1997年11月13日

上告人

右代表者法務大臣

下稲葉耕吉

右指定代理人

細川清

外一〇名

被上告人

オリックス株式会社

右代表者代表取締役

宮内義彦

右訴訟代理人弁護士

林彰久

池袋恒明

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人増井和男、同小貫芳信、同脇博人、同村川広視、同寳金敏明、同貝阿彌誠、同小池晴彦、同深井剛良、同小阪満、同栗谷桂一、同小松清、同山岡千秋の上告理由について

滞納に係る国税の本税の金額が法定納期限後における一部納付等により逐次減少した場合において、税務署長が、不動産競売の執行裁判所に対して交付要求をするに際し、交付要求書の本税の欄に交付要求時に存在する本税の金額を記載し、延滞税の欄には具体的金額を記載せず法律による金額の交付を求める旨のみを記載したときは、右交付要求の効力は、記載された本税の金額及びこれに対する交付要求書記載の法定納期限の翌日から法定の割合を乗じて計算される延滞税の金額についてのみ及び、法定納期限後の一部納付等により交付要求時以前に消滅した本税部分の金額に対応して計算される延滞税の金額には及ばないと解するのが相当である。けだし、不動産競売手続においては、配当要求をすることのできる債権者は、配当要求の終期までに配当を求める債権(利息その他の附帯の債権を含む。)の原因及び額を記載した書面で配当要求をしなければならないものとされており(民事執行法一八八条、五一条一項、八七条一項二号、民事執行規則一七三条一項、二六条)、その趣旨は、執行裁判所をして配当を求める債権の額を把握させ、剰余を生ずる見込みの有無及び一括売却の可否等を判断させることにより、執行手続を適正に行わせようとするものであって、右書面に示された債権の額は、当該債権者が売却代金から配当を受け得る限度を示し、配当要求の終期後はこれを拡張することができないと解されるところ、交付要求は、国税の滞納者の財産に係る強制換価手続における換価代金からの配当を求める申立てであって、配当要求と性質を同じくするものであるから、税務署長は、配当を求める国税債権(延滞税その他の附帯の債権を含む。)の内容及び金額を明らかにし(国税徴収法施行令三六条一項)、延滞税などで確定金額の記載が困難なものについては、配当期日において配当すべき金額の計算が可能となるような事実関係を記載する必要があるからである。以上と同旨をいう原審の判断は正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官遠藤光男 裁判官小野幹雄 裁判官井嶋一友 裁判官藤井正雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例